センター長のあいさつ

あいち小児保健医療総合センターは、2001年11月1日に一部オープンして23年が経ちました。その歴史の中でも、2016年の救急棟と周産期部門設置により、高度急性期医療を軸とする小児病院に大きく変化して、「子どもの最後の砦」としての医療を提供しています。

当センターが開設以来一貫して守っている柱は、「子どもが中心」の医療や療養環境を提供し、「病院らしくない病院」にすることです。そのために、建築デザインやホスピタルアートをはじめ、子どもの遊びと生活を支える医療保育士(ホスピタル プレイ スペシャリスト)の活動、様々な困難を抱えたご家族を支える保健師やソーシャルワーカー、医療的ケアを必要とするお子さんを支える「子ども家族医療支援室」など、様々な取り組みを行っています。また、多くのボランティアの方たちが、入院中でも子どもらしい生活ができるように寄り添い、楽しい遊びや企画を提供してくれています。

一方で医療の内容はますます高度化し、「病院らしい病院」になっています。2024年2月に、愛知県で2機目のドクターヘリが藤田医科大学を拠点として運航開始して以来、重症な小児患者のヘリ搬送が急激に増加しました。愛知県内各地から、最長でも15分で当センターに到着します。胎児の超音波(エコー)検査によって先天性心疾患の精密な診断が可能となり、生まれた直後に手術を行って救命するといった事例も実現しています。心臓移植を待機しながら、補助人工心臓装置をつけて生活するお子さんにも対応しています。

最重症の患者さんが集まってくる中では、どうしても救命が叶わず亡くなられるお子さんもいます。そうしたお子さんには、ご家族とともに最善の時間を過ごしていただけるための多職種による支えから、脳死下臓器提供という選択肢の実現まで、多くの経験を積んできたスタッフがしっかり寄り添っていきます。

我が国の少子化は、予想を上回るスピードで進んでいます。各地域においては、小児人口の減少と高齢者に対する医療のニーズが拡大し、小児医療に対する比重は相対的に低下せざるを得ません。それに対応するために、重症者や特殊な疾患に限らず、小児に対する医療は集約化していくことが必然的に迫られてくることでしょう。当センターでも、子どもによくある一般的な病気(common diseases)に対する安全・快適で丁寧な医療にも、これまで以上に力を注いでいきたいと考えています。

小児病院は高度で特殊な病気を診るちょっと敷居の高い病院、と思われがちですが、そんなことはありません。医療を必要とする全てのお子さんに門戸を開き、それぞれの方にとって最良の治療を提供するのが小児病院です。子どもに関わる保健・医療関係者の皆さま、あいち小児センターまでお気軽に声をおかけ下さい。

2025年4月1日

あいち小児保健医療総合センター
センター長 伊藤 浩明